2018-09-03 (Mon)
2018年8月16日、世界最大のLoRaWANコミュニティ - The Things Networkは、LoRaWAN specification v1.1xに正式対応しました。セキュリティの強化、ジョインサーバを使いながら他のLoRaWANネットワークオペレータとのローミング【TTN有料版TTIのみ適用】、そしてLoRaデバイスクラスBによるビーコン機能などが実現が可能になりました。
*LoRaWAN specificaiton v1.1について
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http://joomlaweb.blog117.fc2.com/blog-entry-725.html
先週土曜日9月1日災害の日に「NHKスペシャル MEGAQUAKE「南海トラフ巨大地震 “Xデー”に備えろ」では来るべき国難ともいえる南海トラフと巨大地震について特集していました。
下記内容は、和歌山大学と国土交通省大規模土砂災害対策技術センターによる衛星・LoRaネットワークを利用した安価な計測システム構築に関するホワイトペーパーです。
現在、新しい長距離通信技術であるLoRaが全世界に普及しています。 このような実験が日本でも実を結び、巨大地震時1人でも命が救われることを心から祈る次第です。
衛星・LoRaネットワークを利用した安価な計測システムの構築
1. はじめに
電子通信技術の発展と省電力化の推進により、既に市街地においては様々な通信環境を利用したIoT(Internet of Things)によるICT(情報通信技術)が発達し、M2M(Machine to Machine 機械間による情報伝達)によりBig Dataが収集されるシステムが急速に構築されつつある。収集されたデータは即座にインターネット上のクラウドサーバに集積され、データをモバイル端末等用いた検索閲覧するシステムも併せて構築されており、データ利用が進められている。
しかし土砂災害や洪水等の発生現場となる山間部においては、街中のようにインターネットに接続された無線LAN(Wi-Fi)網や携帯電話網も使用することが出来ないことが多い。そのため、多くのセンサによりきめ細やかな情報収集を行い、防災 / 減災のための一助とすることが出来ていない。加えて、風雨にさらされる耐候性が求められる野外現場において、安価で利用可能なIoT端末も普及していない。
そこで本研究ではインターネット回線と接続するために衛星や新たな地上ネットワークを利用実証を行う事、また耐候性を持つ安価で利用可能なIoT端末を開発、現場にて実証することを目的とした。
図 1 低軌道衛星を使った場合の機器構成


2. 衛星通信網の利用実証
通常の通信回線が整備されていない山間部等において、市街地と同様の広帯域の通信手段を利用する場合は高コストの整備費用を必要とする。これまでは通信のみならず堅牢で高価な地上観測装置を利用してきたため、設置出来る箇所・個数が限られていた。そのため、万が一の機器不良の場合に比較データが無く、大雨発生時には人手により危険な現場視察を行う必要があり、犠牲者が出る事もあった。そこで本研究では広帯域を諦め、減災活動のために必要最小限の情報量を厳選し送信する狭帯域通信を利用することとして、システム構築を行った。
また山間部での通信インフラのイニシャルコスト・ランニングコストの低減を目指し、衛星の利用実証を行った。
従来のシステムでは、地球から遠く離れた静止軌道(地球からの距離約36,000km)上に位置する通信衛星に対して、大出力で広帯域の通信を実施していた。そのため、送信機には大電力が必要であり、大型の発電機を設置・運営する必要があった。このようなケースでは毎日の給油作業が必要不可欠であり、ランニングコストを高める一因ともなっていた。そこで本研究では低軌道(地球からの距離数百km)を周回する衛星を利用する事で通信距離を低減し、30cm角サイズの太陽電池+自動車用の12Vバッテリーのみを使った連続運用に成功した。
図 2 静止衛星を利用した場合の通信機器

一方、近年では海外諸国でもIoTに関する関心が高い。そのため静止衛星ではあるがIoTへの利用を念頭に置き、衛星側に巨大なアンテナを利用する事で地上側からは低出力で通信が可能なシステムの構築が進んでいる。また低軌道衛星を使った本研究での連続実証試験でも、衛星位置が変わることで通信のための補足等が出来ない事も一つの原因と考えられるトラブルで、データ転送に欠損が生じることがあった。そこで本研究でも大アンテナを有する静止衛星を利用し、低軌道衛星の場合と同様の電力構成で通信が可能か、確認試験を行い、良好な通信環境が得られることを実証することが出来た。
3. IoT端末の開発
衛星を使った低コスト・省電力のシステムでは、現時点では地上送信機は一台ずつ衛星通信のための免許申請が必要で有り、IoTが目指すような多量のセンサネットワーク構築には不向きである。衛星免許が不要となる衛星を利用したIoTシステムの構築も進められているが、まだ実用段階には至っていない。そこで本研究では、安価なWi-Fi利用可能なワンチップPCを利用し、衛星通信機の廻りにローカルなネットワークを構築、データを集約して衛星に送信するIoT端末を開発した。
図 3 WiFi通信機能を搭載したIoT端末

本端末は従来のインターネットに接続されたWi-Fi環境でも利用することが出来るため、都市部等でも利用可能である。またセンサーを除いて電源(5×10cmサイズの太陽電池パネルと単三電池サイズの充電池により連続利用可能)で1万円以下で供給が可能で有り、低コスト化にも成功している。
一方、近年では省電力ではあるが長距離通信が可能である無線通信手段であるLoRaを使ったチップも使われるようになってきた。LoRaは見通しが良ければ1~2kmの通信が可能とされており、本件九チームでは成層圏気球に搭載し、100kmを越える双方向通信にも成功している。このような長距離通信を中継機(構造的には他IoT端末と同じシステムで利用出来る)を置くことで、山間部からインターネット環境のある市街地まで安価な通信網を構築する事が出来る。そこで本研究ではLoRaを搭載したチップを利用したIoT端末(中継機能にも別に対応させることも可能)の開発を行った(図-4)また河川の水位計、あるいは崖崩れ等が予測される地点で傾斜計による計測実証を実施した(図-5)。いずれも単体で、見通しにもよるが通信距離は1km程度可能であることが確認出来た。またセンサーをいたコストも2万円以下で供給可能であり、低コスト化にも成功している。また併せて、ローカルなネットワーク上にも計測データを集約させるエッジサーバを置くことにも成功しており、万が一インターネット回線が切断されてもローカルにはセンサ情報を閲覧することが可能である。
図 4 LoRa通信機能を搭載したIoTセンサー端末

図 5 水位計ならびに傾斜計設置例


5. おわりに
本研究で実証された衛星通信網、およびIoT端末を使う事で、従来の遠隔計測機とくらべると1/10~1/100程度のコストで計測端末を構築、通信ネットワークを確立することが出来た。またエッジサーバも併せて利用する事で、極めて抗たん性の高い低コストなシステムを構築する事が可能である。今後、多くの現場で利用される事が期待される。
和歌山大学 秋山演亮
和歌山大学 山口耕司
国土交通省大規模土砂災害対策技術センター 吉村元吾
国土交通省大規模土砂災害対策技術センター 菅原寬明
国土交通省大規模土砂災害対策技術センター 田中健貴
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
災害ネットワークにLoRaテクノロジーを活用 - Sensor Network様
以上
■The Things Network - LoRaWANをみんなでシェアして使う 新刊本好評発売中!

Johan Stokking (左 The Things Network TECH LEAD=CTO)とWienke Geizeman (右 The Things Network CEO)

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https://www.kohgakusha.co.jp/books/detail/978-4-7775-2043-5
■LoRaWANサクセスキット

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LoRaWANサクセスキットの詳細は下記までお問い合わせください。
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◆詳細はこちらから....
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https://www.thethingsnetwork.org/country/japan/
Amazon社AWS部門ソリューションアーキテクト・ディレクターMatt YanchyshynによるThe Things NetworkのB2B版であるThe Things Industriesの現地取材によるユースケースレポートです。

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衛星・LoRaネットワークを利用した安価な計測システムの構築
1. はじめに
電子通信技術の発展と省電力化の推進により、既に市街地においては様々な通信環境を利用したIoT(Internet of Things)によるICT(情報通信技術)が発達し、M2M(Machine to Machine 機械間による情報伝達)によりBig Dataが収集されるシステムが急速に構築されつつある。収集されたデータは即座にインターネット上のクラウドサーバに集積され、データをモバイル端末等用いた検索閲覧するシステムも併せて構築されており、データ利用が進められている。
しかし土砂災害や洪水等の発生現場となる山間部においては、街中のようにインターネットに接続された無線LAN(Wi-Fi)網や携帯電話網も使用することが出来ないことが多い。そのため、多くのセンサによりきめ細やかな情報収集を行い、防災 / 減災のための一助とすることが出来ていない。加えて、風雨にさらされる耐候性が求められる野外現場において、安価で利用可能なIoT端末も普及していない。
そこで本研究ではインターネット回線と接続するために衛星や新たな地上ネットワークを利用実証を行う事、また耐候性を持つ安価で利用可能なIoT端末を開発、現場にて実証することを目的とした。
図 1 低軌道衛星を使った場合の機器構成


2. 衛星通信網の利用実証
通常の通信回線が整備されていない山間部等において、市街地と同様の広帯域の通信手段を利用する場合は高コストの整備費用を必要とする。これまでは通信のみならず堅牢で高価な地上観測装置を利用してきたため、設置出来る箇所・個数が限られていた。そのため、万が一の機器不良の場合に比較データが無く、大雨発生時には人手により危険な現場視察を行う必要があり、犠牲者が出る事もあった。そこで本研究では広帯域を諦め、減災活動のために必要最小限の情報量を厳選し送信する狭帯域通信を利用することとして、システム構築を行った。
また山間部での通信インフラのイニシャルコスト・ランニングコストの低減を目指し、衛星の利用実証を行った。
従来のシステムでは、地球から遠く離れた静止軌道(地球からの距離約36,000km)上に位置する通信衛星に対して、大出力で広帯域の通信を実施していた。そのため、送信機には大電力が必要であり、大型の発電機を設置・運営する必要があった。このようなケースでは毎日の給油作業が必要不可欠であり、ランニングコストを高める一因ともなっていた。そこで本研究では低軌道(地球からの距離数百km)を周回する衛星を利用する事で通信距離を低減し、30cm角サイズの太陽電池+自動車用の12Vバッテリーのみを使った連続運用に成功した。
図 2 静止衛星を利用した場合の通信機器

一方、近年では海外諸国でもIoTに関する関心が高い。そのため静止衛星ではあるがIoTへの利用を念頭に置き、衛星側に巨大なアンテナを利用する事で地上側からは低出力で通信が可能なシステムの構築が進んでいる。また低軌道衛星を使った本研究での連続実証試験でも、衛星位置が変わることで通信のための補足等が出来ない事も一つの原因と考えられるトラブルで、データ転送に欠損が生じることがあった。そこで本研究でも大アンテナを有する静止衛星を利用し、低軌道衛星の場合と同様の電力構成で通信が可能か、確認試験を行い、良好な通信環境が得られることを実証することが出来た。
3. IoT端末の開発
衛星を使った低コスト・省電力のシステムでは、現時点では地上送信機は一台ずつ衛星通信のための免許申請が必要で有り、IoTが目指すような多量のセンサネットワーク構築には不向きである。衛星免許が不要となる衛星を利用したIoTシステムの構築も進められているが、まだ実用段階には至っていない。そこで本研究では、安価なWi-Fi利用可能なワンチップPCを利用し、衛星通信機の廻りにローカルなネットワークを構築、データを集約して衛星に送信するIoT端末を開発した。
図 3 WiFi通信機能を搭載したIoT端末

本端末は従来のインターネットに接続されたWi-Fi環境でも利用することが出来るため、都市部等でも利用可能である。またセンサーを除いて電源(5×10cmサイズの太陽電池パネルと単三電池サイズの充電池により連続利用可能)で1万円以下で供給が可能で有り、低コスト化にも成功している。
一方、近年では省電力ではあるが長距離通信が可能である無線通信手段であるLoRaを使ったチップも使われるようになってきた。LoRaは見通しが良ければ1~2kmの通信が可能とされており、本件九チームでは成層圏気球に搭載し、100kmを越える双方向通信にも成功している。このような長距離通信を中継機(構造的には他IoT端末と同じシステムで利用出来る)を置くことで、山間部からインターネット環境のある市街地まで安価な通信網を構築する事が出来る。そこで本研究ではLoRaを搭載したチップを利用したIoT端末(中継機能にも別に対応させることも可能)の開発を行った(図-4)また河川の水位計、あるいは崖崩れ等が予測される地点で傾斜計による計測実証を実施した(図-5)。いずれも単体で、見通しにもよるが通信距離は1km程度可能であることが確認出来た。またセンサーをいたコストも2万円以下で供給可能であり、低コスト化にも成功している。また併せて、ローカルなネットワーク上にも計測データを集約させるエッジサーバを置くことにも成功しており、万が一インターネット回線が切断されてもローカルにはセンサ情報を閲覧することが可能である。
図 4 LoRa通信機能を搭載したIoTセンサー端末

図 5 水位計ならびに傾斜計設置例


5. おわりに
本研究で実証された衛星通信網、およびIoT端末を使う事で、従来の遠隔計測機とくらべると1/10~1/100程度のコストで計測端末を構築、通信ネットワークを確立することが出来た。またエッジサーバも併せて利用する事で、極めて抗たん性の高い低コストなシステムを構築する事が可能である。今後、多くの現場で利用される事が期待される。
和歌山大学 秋山演亮
和歌山大学 山口耕司
国土交通省大規模土砂災害対策技術センター 吉村元吾
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国土交通省大規模土砂災害対策技術センター 田中健貴
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以上
■The Things Network - LoRaWANをみんなでシェアして使う 新刊本好評発売中!

Johan Stokking (左 The Things Network TECH LEAD=CTO)とWienke Geizeman (右 The Things Network CEO)

*工学社新刊本リンク先
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https://www.kohgakusha.co.jp/books/detail/978-4-7775-2043-5
■LoRaWANサクセスキット

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LoRaWANサクセスキットの詳細は下記までお問い合わせください。
◆オープンウェーブお問い合わせページ
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